兵法三十六計とルノルマンカードから読み解く⑲
- 言霊占い師りつか
- 4月6日
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更新日:4 日前
敵の根を断つ静かなる力:兵法「釜底抽薪」とルノルマン「塔」が示す人生の戦略
兵法三十六計、その奥深い知略は、戦の世だけでなく、現代を生きる私たちにとっても示唆に富む教訓を与えてくれます。中でも第十九計「釜底抽薪(ふていちゅうしん)」は、直接的な衝突を避け、敵の勢いの源を断つことで勝利を導くという、静かでいて効果的な戦略です。
一方、ルノルマンカードの世界に目を向けると、19番のカードは「塔(Tower)」として描かれます。天高くそびえ立つ塔は、孤立、自立、権威、そして組織や安定といったキーワードを内包しています。一見すると異なる性質を持つように見える二つの概念ですが、深く掘り下げていくと、意外な共通点が見えてくるのです。

もし、人生における困難や課題を「敵」に見立てるならば、「釜底抽薪」の知恵は、問題の根本原因に焦点を当て、そこから解決の糸口を探るというアプローチを示唆します。表面的な現象に目を奪われるのではなく、問題を生み出している構造そのものに働きかけることで、本質的な解決を目指すのです。
例えば、職場の人間関係に悩んでいるとしましょう。表面的な衝突や感情的な対立にばかり目を向けていては、問題はなかなか解決しません。しかし、「釜底抽薪」の視点を取り入れるならば、なぜそのような対立が生まれるのか、その根源的な原因を探ることに意識が向きます。もしかしたら、コミュニケーション不足が原因かもしれませんし、評価制度への不満が根底にあるのかもしれません。そうした根本原因に対処することで、表面的な問題は自然と解消に向かう可能性があります。
ここでルノルマンカードの「塔」が持つ意味合いを重ねて考えてみましょう。「塔」は孤立や自立を象徴します。問題の根本原因を探るためには、時に周囲の意見や感情に流されることなく、客観的な視点を持つことが重要になります。塔の上から周囲を見下ろすように、問題全体を俯瞰し、本質を見抜く力が必要となるでしょう。
また、「塔」は権威や組織といった意味合いも持ちます。問題の根本原因が、組織の構造的な問題や、既存のルールや慣習に起因する場合もあります。そうした場合には、既存の枠組みにとらわれず、時には変革を促すような、強い意志と行動力が求められるでしょう。
では、これらの考察を踏まえ、具体的な実際の鑑定の場面でどのようにアドバイスを導き出せるでしょうか。
例えば、ある相談者が「仕事がうまくいかず、目標達成が難しい」という悩みを抱えているとします。周囲の状況や自身の努力不足ばかりを語る相談者に対して、ルノルマンカードで状況を占ったところ、「塔」のカードが現れたとしましょう。
この場合、単に「孤立しているから周りと協力しましょう」とか「自立心が足りないからもっと頑張りましょう」といった表面的なアドバイスに終始するのではなく、より深い洞察に基づいたアドバイスを心がけるべきです。
「塔」のカードは、目標達成を阻む要因が、表面的な問題だけでなく、もっと根深い構造的な部分に潜んでいる可能性を示唆しています。兵法三十六計の『釜底抽薪』が示すように、目標達成を阻む真の原因、つまり『薪』となっているものを見つけ出し、そこから取り除くことを考えてみましょう。それは、現在の仕事の進め方かもしれませんし、チーム内の役割分担かもしれません。あるいは、会社全体のシステムや方針に課題がある可能性も考えられます。
『塔』が示す孤立という側面からは、あえて一人でじっくりと問題に向き合い、客観的に状況を分析する時間を持つことも有効かもしれません。また、『塔』の持つ権威という意味合いからは、もし組織的な課題が原因であるならば、臆することなく改善提案を行う勇気も必要となるでしょう。
大切なのは、表面的な問題に囚われるのではなく、真の原因に目を向け、根本的な解決を目指すことです。それは、一見すると遠回りのように見えるかもしれませんが、最終的には最も効率的で持続可能な解決策となるはずです。
このように、「釜底抽薪」の戦略とルノルマンカード「塔」の意味合いを掛け合わせることで、より深く、本質的なアドバイスを導き出すことができるのです。人生における様々な課題に対して、表面的な対処療法ではなく、根源的な解決を目指す視点を持つことの重要性を、この二つの概念は私たちに教えてくれます。困難に直面した時こそ、立ち止まって真の原因を見極め、静かに、しかし確実に、問題の根を断つ戦略を実行していく。それこそが、「釜底抽薪」と「塔」が示す、賢明な生き方なのかもしれません。
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